第4章 振りほどくことができなかった日
「決まってんだろ。飲ませて、運ぶやつ」
「何を?」
「さあな。部屋か--ああ、車もあるか。今日はどっちだろうな」
「そんな情報、リストには」
言いかけた言葉にかぶせるように、レノが薄く笑う。
「そんなもん載せるわけねえだろ」
ぴしゃりと遮られる。
落ちた視線の先で、指がドレスをかき集めた。
「まあ、飲まなくてよかったな」
距離を縮めたレノが、彼女の細い手首を掴んだ。
「皺になるぞっと」
近い距離と伝わる熱。
アグレイスの体は凍り付いたように動かない。
「……離して」
震える唇が、かすれた音を吐き出す。
「嫌か?」
これ以上何も言わないように。ぎゅっと力の入る唇。
息が混じるほどの距離。レノの口元が、わずかに歪んだ。
「じゃあ、そのままでいい」