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【FF7】ボクシング・デー

第4章 振りほどくことができなかった日


恨めしそうな視線を向けるもどこ吹く風。

「よぉー、アグレイスまだ生きてたのかー」

にたりと口の端をあげたレノに、腕を首に回され、ぐっと引き寄せられる。
負けじと押し返すが、びくともしない。

見知った顔が慌てて踵を返す姿が視界の端に映った。
助けを求める間もない出来事だった。

傍から見たら縋りついているようにしか見えない。

「ちょっと!」

抵抗も聞かず、レノは歩き出す。薄いショール越しに押し込まれた自分勝手な指先は、彼女に反論の余地を与えず導いていく。
高いヒールでは踏ん張りもきかず、連れ込まれたのは、客用の休憩室。

ノックもなく乱暴に扉を開けると、幸いにしてそこは無人だった。

レノはアグレイスをソファーに沈ませると、自分は座らず、行儀悪く背もたれに手をかけて見下ろした。

「そんなに酒が飲みたかったのか」

開放感に胸を撫で下ろす彼女の態度を不満と取ったのか、レノはぶっきらぼうに言った。

「お酒に罪はないわ。まだ入れたばかりだったのに」

弾ける泡を思い出し、思わず拳を握る。
横目で様子をうかがって、彼は首を振った。

「確かに入れたばかりだったな」

「でしょう。高いお酒なのに一口も付けないなんて冒涜だわ」

一瞬、きょとんとしたあと、レノが鼻で笑う。

「入れられたのは薬だ」

「えっ?」

「気付かなかったのか」

「……あの人、自動車部門の役員よ」

「おお、偉いな。ちゃんと覚えてんのか。それで」

アグレイスが不満げな顔を向ける。

「肩書で飲むもん選ぶのかよ」

吐き捨てるように言い捨てて、そっぽを向く。

「そんなこと」

弱く反論すると、振り向いたレノがあざ笑う。

「じゃあ、ああいうのも知っとけよ」

「どういうの?」
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