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【FF7】ボクシング・デー

第4章 振りほどくことができなかった日


振り向いた先、グラスを片手に笑みを浮かべる男たち。

彼らのスーツに目を細めた。

同じ色でも纏う人間を引き立てる黒と返り血を目立たせない黒。
比べるまでもない。

一瞬、仕事の目で見てしまってから、首を小さく振った。
会場の空気を壊してはいけない。

アグレイスは高すぎるヒールに負けないようつま先に力を込める。
腕を絡めた男を見上げ、シャンデリアの光を集めた唇の形を整えた。

*****

腰に回された手。
それが少しばかり下りてきたとしても、貼り付けた笑顔は崩さない。

周囲に気を配り、社交をこなす。
相槌は要所要所で、相手の話の腰を折らないようにと。

笑顔を見せる間はこれでよいのだろうか。
今、反応が遅れた気がする。

本物の中に紛れた偽物を悟られないようにする。じわじわと擦り減る神経に、こんなことなら裏方の方がまだマシだと自分の中だけで悪態をついた。

優雅に流れる曲が何回変わったか。

ようやくかかった交代の声。
引きつっていた口元は、久しぶりに正しく歪められた。


その場を離れる足が、薄布に引っ張られてぎこちなく止まる。
会場内でもひときわ熱を帯びた人々の輪。
中心には、会場内に笑みを振り撒く女性たちがいた。

--受付の子たちだ。

秘書課の陰謀とやらで強制された、揃いのドレスは各々の個性を引き立てる色をあてがっている。ひとりよりふたり。ふたりよりも三人と数で推す、段違いな華やかさが会場の視線を集める。

その中でも一段と輝いていたのは、友人だった。

彼女に近付こうとする男たちの行く先を、やや強引に遮る女性。ふわりとした髪と同じくらい柔らかそうなドレープ。外に出たことなんてないかのような透明感のある白い肌をこれ見よがしとばかりに晒す。艶のある桃色から甘い声がこぼれ落ちているように見えるが--

それでも、男たちの視線が障害となる女性へ移ることはなかった。

掛け値なしの美女たちを前にしてなお、誰一人として心を動かされない。
それは、なお目を奪う”何か”があるからだ。

本当の魅力を前にしては、どんな知恵も策も意味を持たないのだ。

中心にいる友人がこちらに目を向けた。
小さく手を振ると、作っていない自然な笑みが返ってくる。
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