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【FF7】ボクシング・デー

第4章 振りほどくことができなかった日


アグレイスは、彼女が着るはずだったドレスへと視線を落とす。

「もう着る機会なんてないから、あなたあげる」と押し付けられた一着は、まるであつらえたかのようにアグレイスの体に合っていた。

せっかくだからと、見立ててもらった頬紅は、手に取るのも恥ずかしい桃色。
ごくりと喉を鳴らし、恐る恐る筆を撫でつける。

友人のように誰もを惹きつけるまではいかなくてもいい。
ただひとりからの一言がもらえたら。

「それが難しいんだけどね」

彼女の曲線に沿ってしなやかに落ちるシルエット。
体を捻れば、空気を纏った淡雪のように儚いヴェールがふわりと舞う。

鏡の向こうには優美なドレスに包まれた、分不相応な自分。

期待した分だけ、落胆も大きい。

--問題は、それだけじゃない。
これほど体の線を露わにするデザインで、武器をどこに隠したものか。

コルセットにナイフ。ガードルに銃。
昔見たスパイ映画の二番煎じ。

試行錯誤の末に恥も外聞もなく上司に相談した。

彼は無表情のまま、こめかみを指で抑える。
いつもとは違う緊張が生まれた。

「今回は不要だ」

いつもより時間をかけて出した結論は、会場内での「要人警護」。

--とは名ばかり。
実態は、場を華やかに見せるための”添え物”に近い。
いや、いざという時の盾だった。
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