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天狐あやかし秘譚

第100章 雲散鳥没(うんさんちょうぼつ)


☆☆☆
5月の某日。
宮内庁陰陽寮占部衆に併設された会議室で、衆の幹部会議が行われていた。当然、占部の『属の一位』である、私、日暮美澄(ひぐらし みすみ)も参加している。

しかし、私は、この会議というのがどうも苦手だった。多分、それは我が衆のボスであるところの土門杏里も同意してくれるのではないかと思う。

あーあ、早く終わんないかなあ・・・。

先日の黄泉平坂を巡る大きな戦いから2週間が経過していた。事件の事後処理でてんやわんやだった陰陽寮も、やっと日常の平穏を取り戻しつつあった。

あの事件でも大活躍だったという、浦原綾音の退院は来週を予定しているそうだ。まあ、一度『死んだ』にも関わらず、1ヶ月程度の入院で済んでいる方が奇跡と言えば奇跡だ。その点に関しては、あの時、結界の内側に送り出した身として、私もものすごい責任を感じていた。

本当に、生きててよかった。
同時に、その時同席できなかったのが、心底、悔やまれた。

『魂呼せの秘法』

そんな珍しい、もう今生では二度とお目にかかれないような秘術の執行を目にする機会を逸したことは、術式の調査研究を生業のひとつとしている陰陽部門占部衆に所属する陰陽博士としては、『口惜しい』の一言では済まされないほどの気持ちを掻き立てられた。

「・・・っていう依頼が来てんだけど・・・美澄、やれそう?」

は!
しまった。

突然、その私の上司たる土門から名を呼ばれて、私は居住まいを正す。つい、ぼんやりと先日のことに思いが漂ってしまい、会議中であることを忘れるところだった。

「あ・・・ええ!ええ!で、できます!!」

そうは言ったものの、何を聞かれたかまるで分かっていなかった。
まあいいや。あとで冴守か設楽にでも聞けばわかるだろう。
ところが、

「土門様、おそらく日暮さん、聞いてなかったですよ」

などと、冴守が余計なことを言う。

こ・・・こいつ!!
相変わらず空気が読めないヤツ!!
一応、私のほうが位階が上なんだから、も少し立ててくれたっていいじゃない!
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