第100章 雲散鳥没(うんさんちょうぼつ)
こうしている間にも、誰かがあの薬の餌食になっているかもしれない。
そう思ったら居ても立ってもいられなかった。
「お願い、廣金くん。私は先に行って、この薬の販売元、調べとくから、応援を呼んでもらって!」
そう言い残して、研究室を後にした。
後ろから廣金くんが「え!?ちょっ・・・ちょっと!」と声をかけてきていたが、私の気持ちは逸っていた。その気持ちのまま、走り出していたのだ。
でも、普段の私は臆病であり、通常は、こんな蛮行には及ばない。
絶対に、土門に報告し、体制を整えてから行動する。
そんな私がなぜ、こんな正義感に駆られたような行動に出たのか?
そう、このときの私は、自分でも知らず知らずの内に、黄色い錠剤の影響を、ほんの少し、受けてしまっていたのだ。
ここでの判断を、私は後にものすごく悔いるハメになる。
なぜなら、ここでの独走がきっかけで、私は、後に『ゴースト・ドラッグ事件』と呼ばれることになる、この事案の当事者の一人になってしまったからだ。