第11章 密事
「いずれにせよ、俺はお前を常に見ている」
「あなたはお呼びじゃないと何度言えばわかります?人の話を聞かないのも大概にしないと耳を削ぎ落としますよ」
小枯の手を引いて鬼鮫が笑顔で言い放ち、南天は身を竦めて茅場が笑った。
「若いな。よろしい。悪くない。我武者羅に生きろ」
当の霜刃は涼しい顔で身動ぎひとつせず、小枯は鬼鮫を見上げて困ったように、けれどくすぐったそうに口を引き結んだ。
そんな小枯に慈しむような哀れむような顔を向け、茅場が微かに息を吐いた。
見咎めた鬼鮫に首を振り、茅場は舞草刀を撫でながら呟いた。
「だが、それもすべきことをした上での話だ」
初枯を巡る経巡の変革。
凍み鎌と霜鎌が腐心した企てを果たさなければ話は進まない。
「南天よ。初枯と落ち合う手筈に変わりはないか」
「初音によれば呼子笛は聞かれておりません。神成に勘付かれることを考慮したとしても、手筈を変えるのならば初枯は必ずそれを報せてくる筈です」
「ならば初枯は明日参の牟礼の麓に現れる」
茅場は鬼鮫と霜刃を交互に見た。
「南天を担いで参の牟礼を下り、初枯と交渉しろ。誰が交渉するのでもいいが、話が成ったらば改めてここに来い。大枯や雨露らも連れてだ。逃げても無駄だ。逃がす気はない。私は半端事をしている程若くはないからな。そこで改めて話をしよう」