第11章 萌芽
「私はあの大祭で初めて霜刃の舞を見たんだ。あのときは霜刃は…」
言いかけて口を噤む。
ちょっと眉根をよせて考え込み、首を傾げる。
「…常盤だったな。常盤緑みたいな…。鬼鮫にも、見せてやりたかったよ」
鬼鮫は黙って小枯を見ていた。
怒りは湧かなかった。湧きそうなものなのに、不思議と湧かなかった。
私はその頃、里で殺し合いの支度をしていた。
その当時の私が霜刃の舞を見ても、多分何も感じなかっただろう。ただただ、手を汚す為の鍛錬を、目的を知りながら続けていた私に、舞など響く由もない。
呑気なものだと腹を立てるのが関の山だろう。
小枯の、子供の頃の、大事な思い出。
もどかしいが、手の届かないもの。
ー常盤緑ー。
背筋が、何故か冷えた。
水を浴びせかけられたような。
鬼鮫はただ黙って小枯を見た。
懐かしげに目を伏せ、物思いする小枯を。