第4章 深すぎず浅すぎず、近すぎす遠すぎず
高学年ともなると、
クラス全体に“恋”の気配が漂い始める。
そんな中、ある噂が浮上した。
「のこと、坂本くんが好きらしいぜ」
坂本はクラスで人気の男子。
背が高くてスポーツ万能。
お調子者で、女子にはよく話しかけるタイプ。
ミナがその噂を聞いて、
休み時間に駆け寄ってきた。
「ちゃん!知ってる!?
坂本くん、ちゃんのこと好きなんだって!」
「……えっ!?」
は目を丸くして固まる。
(好き……?
どうして……?)
ミナはにやにやしている。
「だってちゃん可愛いし!
男子、みんな気にしてるよ?」
は頬が熱くなり、
とっさに机に顔を伏せた。
「や、やだよ……そんな……!」
⸻
その日の帰り。
男子2人がを追いかけてきた。
「〜、今日勉強教えてよ!」
「俺も!って字きれいじゃん!」
突然の囲まれには戸惑う。
「え、えっと……」
ミナは横で腕を組んでぼそっと呟く。
「……あいつら、急に近づきすぎ」
(ミナちゃん……怒ってる?)
しかし、さらに女子の嫉妬が追い打ちをかけた。
翌日、女子の一部がひそひそ声で言う。
「ばっかチヤホヤされてむかつく」
「男子に優しすぎじゃない?」
「どうせかわいいからって調子乗ってるんでしょ」
は胸の奥がずきっとした。
(わたし……そんなつもりじゃ……)
ミナはその声を聞くなり、
くるっと振り返って言い放った。
「ちゃん、そんな子じゃないもん!」
空気が凍った。
でもミナは引かない。
「文句があるなら、本人に言えばいいじゃん!
影で言うのずるいよ!」
女子たちは言い返せず黙った。
はミナを見て、胸が熱くなる。
(……わたし、守られてばかりだ……)