第4章 深すぎず浅すぎず、近すぎす遠すぎず
小学5年。
ミナとはもう、誰から見ても“親友”だった。
休み時間はいつも一緒。
給食も隣の席。
帰り道も変わらず二人並んで歩く。
ある日、ミナが言った。
「ねぇちゃん。
わたし、ちゃんと友達になってからね、
“いじめられてる子を見捨てない”って決めたんだ。」
「……ミナちゃんは、いつも優しいよ。」
「ちがうの。
ちゃんが、あの時わたしに“ありがとう”って言ってくれたでしょ?
あれがすごく嬉しくて……
だからわたしは、ちゃんの味方でいたいんだよ。」
(……ミナちゃん……)
は照れくさそうに笑い、
ミナの手を小さく握る。
「わたしも、ミナちゃんの味方だよ。」
二人はそっと指切りをした。
子どもらしい約束だけれど、
胸に灯る温かさは、大人には作れないものだった。
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冬のある日。
クラスで、背の低い女の子・カレンが男子にちょっとからかわれていた。
「カレンちんちくりん〜!」
「走るの遅いしー!」
男子は悪気がない。
でも悪気がない分、雑で、残酷だ。
カレンは泣きそうになりながら机を握りしめていた。
その時——
「やめなよ!」
ミナが前に出た。
「カレンちゃん、運動苦手なだけじゃん。
得意なこといっぱいあるよ。
人のことからかわないの!」
そしてその後ろに――
そっとが立つ。
「……やめてあげて。カレンちゃん泣いちゃう……」
その一言が、男子たちの動きを止めた。
(ちゃんがそんな顔すると……やべぇ……)
男子たちはバツが悪そうに頭を掻き、
「わりぃ……カレン」
と謝った。
カレンは涙を拭きながら笑う。
「ミナちゃん、ちゃん……ありがとう……!」
ミナは胸を張って笑う。
「友達を守るなんて当たり前でしょ!」
はにこっと微笑んだ。
(ミナちゃんと一緒なら、誰かを守れる……)
その日二人は、
“守り合う友情”をまた一つ強めた。