第3章 はじめましての訓練
だからこそ、
離れることの重さも分かる。
「……」
ホークスはそっとルの頭に手を置いた。
「お前には、俺が戻る場所を守ってほしい。」
「……まもる?」
「ああ。
俺が帰ってくる場所を、泣かないで待っててほしい。」
の目に涙が溜まる。
「でも……ホークスがいなかったら……
私、ひとりじゃ……何も……」
「——ひとりじゃねぇよ。」
ホークスはルイの手を優しく握り返した。
「お前には翼がある。
俺が教えたやつだ。」
「……うん……」
「治せる手もある。
誰かを救える手だ。」
「……うん……」
「それにな。」
ホークスは少し照れたように笑う。
「俺がいないと寂しいって言ってくれるなら……
それだけで十分、俺は帰ってくる理由になる。」
の涙がぽろっと落ちる。
「……かえってくる…?」
「当たり前だろ?
まだと一緒にちゃんと飛べてねぇし。」
その言葉に、の心が少しだけ光を取り戻す。
ホークスはふと、自分の翼から
一枚の赤い羽根を抜き取った。
「……これ、持ってろ。」
小さな光を帯びた羽根を、の両手で包むように乗せる。
「これは……?」
「俺の“戻る場所”の証だ。
がこれ持ってる限り、
絶対にお前のもとに戻る。」
は胸にぎゅっと抱きしめた。
「ぜったい…………絶対だよ……?」
「絶対だ。」
ホークスはに背を向け、扉の方へ歩き出す。
その背中は、
13歳とは思えないほど大きく、強かった。
だけど——
扉を開ける寸前、
ホークスは振り返る。
「」
「……なに……?」
「帰ってくるまで……
泣くなよ。な?」
「……がんばる……」
「よし。」
ほんの一瞬だけ、
ホークスは優しい笑顔を向けた。
その表情は、
が一年で一番好きになった笑顔だった。
扉が閉まる。
廊下の足音が遠ざかる。
静寂が落ちる。
は胸に抱いた赤い羽根を見つめ、
小さく呟いた。
「……かならず……かえってきてね……
ホークス……」
そして——
その約束は、
後に二人の人生を大きく変える“鍵”になる。