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ヒカリノキオク【ヒロアカ】

第3章 はじめましての訓練


公安の訓練棟は、夜の帳が落ちるにつれ静けさが増していった。
照明だけが小さく唸りを上げ、広い施設の一角を白く照らす。

今日も、ホークスとの一対一の訓練が行われていた。

「、呼吸が上手くいってない。力が偏ってる。」
「だって……今日はなんか、身体が変なの……」

の背中がずきずきと熱を帯びている。
普段なら指先から流れる治癒の光も不安定で、淡く震えていた。

ホークスは眉を寄せ、そっと少女の肩に触れた。
あの日みたいに、無闇に驚かせないよう、ゆっくりと。

「今日は無理しなくていい。調子悪いなら、休——」

言いかけた瞬間だった。

の背中が、ぼんっと内側から破裂するように脈打った。

「っ、あ、あぁ……いたい……!」
「!?」

小さな身体がぐらりと揺れ、膝から崩れ落ちる。
ホークスはすぐさま抱きとめ、額に手を当てる。

熱い。
いつもの発熱じゃない。
これは個性の暴走だ。

「落ち着け、俺がいる。深呼吸だ、。」

は息を飲み、か細い声で震える。

「……やだ……なんで……また個性、勝手に……!
 やだよ……こわい……!」

涙がぽたぽたと床に落ちる。
弱い自分を責める声、幼いくせに抱えすぎた心の重さ。

ホークスは胸が痛くてたまらなかった。

「大丈夫。ひとりで痛い思いなんて、もうさせないって言ったろ。」

言葉は静かだったが、その声には確かな決意があった。


だが次の瞬間——

の背中が光りだした。

皮膚の下で、何かが“形”を作りはじめる感覚。
骨が生える。
神経が張り巡らされる。
筋肉が無理やり引き伸ばされる。

「っ、ぁぁあああ!!!」
「!!」

これは“翼が生まれる”痛みじゃない。
“別の誰かの個性”を肉体へ強制的に落とし込む痛みだ。

そう、これは——
コピーの個性が覚醒する瞬間。

ホークスは即座にの背中を支え、震える小さな手を両手で包む。

「痛いよね、怖いよね。……でも、、俺を見て。」

血の気が引いた顔を上げると、そこにいるホークスの瞳は
普段の茶色より、ずっと深くて優しい。

「……大丈夫。絶対に離れない。」
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