第3章 はじめましての訓練
次の角を曲がった瞬間。
「きゃっ!!」
買い物袋を落としてしまった女性役がいた。
袋を助けようとした子役も転んでしまって泣き出す。
は瞬時に駆け寄った。
「だいじょうぶ……痛いの、治るよ」
膝にそっと触れると、光が優しく溶けていき、
すりむいた傷がみるみる消えた。
「……わぁ治った……! ありがとうお姉ちゃん!」
が微笑む。
その後ろでホークスは、落ちた袋の中身を羽根で拾いあげ、
女性に渡していた。
「すんませんね。ウチの相棒、天使なんで」
「ほんとに……天使みたい、ありがとう」
の顔が真っ赤になった。
______
任務開始から1時間が過ぎた頃。
市街地の上空をパトロール中、
監視員の無線が流れる。
「北側エリアにて、不審者役発生。
ホークス組、誘導を願います」
ホークスはの腰を抱いて飛び上がる。
「しっかり掴まってろ。
加速するぞ」
風を裂く音。
はホークスの胸に顔を埋めながら頷いた。
(……やっぱり……ホークスの背中は安心する……)
上空で、不審者役の職員が軽く暴れる芝居をしていた。
ただの訓練なのに、の心臓はどきどきする。
ホークスは真剣な顔になる。
「、怖くねぇよな?」
「……うん。やれる」
ホークスは満足げに笑う。
「よっしゃ。
じゃあ、ふたりでやっちまうか」
羽根が広がる。
も、小さな紅い翼を揺らした。
ホークスが先に降下し、
不審者役の動きを羽根で封じた。
「動くなって言ったよな?」
「くっ……!」
そこへが後方から走る。
「ホークス、横!」
「サンキュ、気付いてた」
ホークスがの動きに合わせて、
羽根を滑らせ、相手の動線を完全に断つ。
監督官が驚きの声を上げた。
「…動きが、完全に同期している…!」
ホークスはにやっと笑う。
「当たり前だろ。
毎日一緒にいるんだぜ?」
は照れ臭そうに笑った。
不審者役の職員は、軽く手を上げて降参する。
「参りました。完璧な連携でした」