第3章 はじめましての訓練
再び地面に立ったは、涙を拭いて上を向いた。
「……もう一回だけ、やってもいい?」
ホークスは目を細める。
「もちろん」
今度はホークスが後ろから付き添い、の翼に手を添える。
「ほら。オレが支えてる。
君は羽ばたくだけでいい」
は小さく息を吸い、力強く翼を広げた。
――ふわっ。
先ほどより安定した浮遊。
背中を流れる風が、怖さではなく“支えてくれる感覚”に変わった。
「……あ、なんか……気持ちいい……」
ホークスが笑う。
「だろ? 空はさ、怖いだけの場所じゃないんだ。
オレはずっと君にもそれを知ってほしかった」
ホークスの言葉が胸に染みる。
羽を動かすたびに、空が近づき、
風がまるで「ようこそ」と言ってくれているようだった。
そしては――生まれて初めて。
ほんの一瞬だけど、恐怖を忘れて“空を好きになれた”。
地上に降りたは、頬を桜色に染めてホークスを見上げた。
「……また、飛びたい」
その言葉に、ホークスの目がわずかに驚き、
次の瞬間柔らかく細められた。
「おっ、これは予想外。
ちゃん、空の虜になった?」
「う……うるさい!」
「はいはい、照れてるの可愛いね~」
「ホークス!!」
笑いながら避けるホークスに、がむくれる。
でも、その表情は訓練前よりずっと明るい。
その様子を委員長がモニター越しに見て、満足そうに呟いた。
「……あの子は、本当に君が必要だったようだな、ホークスくん」
ホークスは羽根を軽く震わせながら応えた。
「オレも……あの子に救われてる気がしますよ」
そうして、
“空の恐怖”を越えて“翼の記憶”を取り戻した日が、
の新しい未来の一歩になった。