第3章 はじめましての訓練
公安で暮らし始めて1年とちょっと経った頃。
の「治癒」は安定し、ホークスともすっかり心を開き合うようになった。
そして、この日。
委員長からの正式な許可を受け、ついに――
ホークスとの“空中訓練”が開始されることになった。
ホークスの翼をコピーする個性はすでに何度も発現している。
背中から生える紅い剛翼は本家より少し小さいが、その羽根は確かにホークスのものと同じ質感だった。
しかし、これまでは地上での羽ばたき練習だけで、空へ飛ぶことはまだ許されていなかった。
理由はひとつ。
「は空を怖がっていた」から。
——あの日。
家族が遠ざかっていく景色を、空の上から泣きながら見上げたせいで。
ホークスはその恐怖を誰より理解していた。
だから今日、彼はいつになく真剣な表情をしていた。
「……無理はしなくていい。
飛ぶ気にならなかったら、ただ羽伸ばすだけでもいいけど?」
は深呼吸し、拳をぎゅっと握る。
「大丈夫。やってみたい……ホークスみたいに、飛んでみたい」
ホークスは小さく笑った。
その笑顔は、空よりも軽やかで、優しかった。