第3章 はじめましての訓練
翼を出す時間、翼を引っ込める時間、
治癒との干渉、体力の低下、精神の揺れ。
すべてをホークスが支えた。
「焦らないでいいよ。君の翼は、君のペースで育てればいい」
少しずつ――ほんの少しずつ。
は笑う時間が増えた。
羽を広げてバランスを取れるようになり、
治癒の力も以前より安定し、
“コピー”の条件も少しずつ理解できるようになった。
そして、時折ホークスが不器用に褒める。
「……今日のちゃん、めっちゃすごかったよ。オレ驚いたもん」
そのたびに、の胸がくすぐったくなる。
家族を失った少女は、
この公安という無機質な場所で――
ゆっくり、確かに、新しい“未来”を育て始めていた。
ホークスの赤い羽と、の薄紫の羽が並んで揺れる姿は、
公安の誰もが驚き、そして密かに微笑ましく見守る光景となった。