第3章 はじめましての訓練
午前中は個性の安定訓練。
広い訓練場にはクッション材が敷かれ、
スタッフが何人も見守る。
ホークスはの後ろにしゃがみ、
彼女の手のひらをそっと包む。
「じゃあ今日も呼吸からいこうか」
「……はぁい」
深呼吸、イメージ、意識の集中。
治癒の個性は精神の揺れや恐怖に大きく影響されるため、
にとっては難しい訓練だった。
でも、ホークスが側にいれば集中しやすい。
「ホークスの声、なんか…おちつく……」
「でしょ? ヒーローの必需品なんだー。
声で安心させるの、結構大事」
治癒の光が指先にうっすら集まる。
「…でた!」
「おっ、いいよいいよ! 今日は安定してるじゃん!」
頭をぽん、と撫でられるたびに
の顔は少し赤くなる。
褒められるのは嬉しい。
優しくされると胸の奥がふわっと温かい。
その気持ちが何なのか、この時のにはまだ分からない。
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公安ビルの屋上は、訓練生が休憩する小さなスペースがある。
フェンスの向こうに街が見下ろせ、風がよく抜ける。
今日もクリームパンを持って座るの横で、
ホークスは羽を風に揺らしながら空を見ていた。
「……ホークスは、ずっと空すきなの?」
「うん。落ち着くし、自由になれる気がしてね」
「じゆう……?」
はその言葉を転がすようにつぶやく。
「ちゃんも、飛べるようになったら楽しいよ。
怖い夢のことも、空に連れてったら少し軽くなるかも」
「……ホークスがいっしょなら、たぶん……」
その言葉を聞いた瞬間。
ホークスは風の中でも分かるほど、柔らかく微笑んだ。
「もちろん。一緒に飛ぼ」
横顔が夕陽みたいに優しい。
はその顔を見ると胸が温かくなる。