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ヒカリノキオク【ヒロアカ】

第2章 発現と出会いと喪失


光と煙、痛み、そして叫び声。
の視界はかすみ、耳には母と父の叫びが遠く、しかし鮮明に響く。
「!逃げなさい!」
「、泣かないで……!何時でもあなたのそばにいるわ」

の小さな手は父母を探して伸びるが、触れるのは空気だけ。
呼びかけても答えはなく、ただ煙と破壊音が支配する。

家族は倒れ、は血だまりの中で震えた。
(なおれ……!なおって……!)

必死に触れても、
幼い個性は発動しない。

「なんで……なんで……!
なんで治ってくれないの……!!」
喉が裂けるような声で泣き叫んだ。

の小さな身体は震え、手は拳を握ったまま。
胸の奥で渦巻くのは、怒りと悲しみ、そして自責の念―。

(私の……個性……治癒……なのに……)
夜ご飯の準備中に母の怪我を治したあの日を思い出す。
あの時、手に触れるだけで温かい光が滲み、痛みを和らげ、傷を消すことができた。

なのに――今は違った。

(どうして……どうして治らなかったの……!)
は小さく泣き叫び、胸を抱きしめた。
「こんなに強く願ったのに……私の個性……何もできなかった……」

そのとき、背後から静かな足音が近づき、低く穏やかな声が響いた。

敵が近づく。
は目を閉じ——

「————!」

その敵が一瞬で拘束された。
ヒーロー、ベストジーニストが駆けつけたのだ。

だがは叫んだ。
「なんでもっと早く……っ、来てくれなかったの⁉
あなたがもっと早く来てくれたら……
ママも、パパも……っ!」

ジーニストは静かに膝をつき、
震えると目を合わせた。

「……すまない。
遅れをとったのは、我々ヒーローの責任だ。」

「…違うの……わたしの治癒も……っ、何もできなくて……!
助けたいって思ったのに……なんで……!」

ジーニストは優しく言った。

「君はまだ幼い。
個性が安定していないんだ。
“助けたい”と思った心が、何より尊い。」

は声も出ないほど泣いた。

それは人生で初めて味わう“喪失”だった。
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