第5章 白銀の面影と漆黒の断絶
その姿の仁美を確認した悟はゆっくりと彼女が寝ているベットに近づく。
そしてゆっくりと同じベットに腰掛けて、仁美を見下ろす。
悟の姿に気がつく仁美の目が開くと、悟の表情は静かに和らいだ。
「……また、無理したね。」
その声音は、他人に向けたことのない柔らかさだった。
悟は仁美の額に手を添え、呪力の流れを探るように指を滑らせ、そのまま頬へ指先を移す。
そして、そっと撫でた。
まるで触れれば壊れるものを扱うかのように。
悟は仁美の体調を整えながら、小さく囁く。
「……頑張ったね。もう大丈夫だよ。」
そのまま、唇を寄せて軽く触れる。
悟の唇が触れても仁美は驚かないし、拒ばなかった。
目を閉じたまま、ただ受け入れた。
悟がいつもそうしてきたから。
仁美にとっては、体調が悪い時に“気遣い”としてされるもの。
悟にとっては違う。
いつの間にか、この小さな触れ方にしか自分の感情を落ち着けられなくなっていた。