第5章 白銀の面影と漆黒の断絶
誰かが代わろうとすると、悟は柔らかい声で言う。
「結構です。触らなくて大丈夫。俺が見ますから。」
それは拒絶ではなく、まるで当たり前のことのような口調。
誰も逆らえなかった。
悟の世話のおかげで仁美の熱はいつも早く下がり、症状も落ち着くから。
家族はただ、悟の背中に感謝を向けるだけだった。
悟が仁美の部屋で彼女の看病をするのが当たり前の日常だった。
五条家と仁美の家の縁が正式に繋がって以降、悟はそれまでと変わらない頻度で洋館に姿を見せた。
仁美が自力で呪力を巡らせることができるようになっても、悟は「見に来ただけ」と軽く言っては、日常のように仁美の側に座った。
もう、二人でいるのは“日課”に近かった。家族でさえその光景に何の違和感も覚えないほどに。
それでも、久しぶりに仁美が倒れたと知らせが入ると、悟の足は誰よりも早くベッドルームへ向かっていた。
扉を開けた瞬間、白いシーツの上で浅い息をする仁美の姿。