第5章 白銀の面影と漆黒の断絶
仁美の呪力の乱れを一度見た悟は、本家へ報告するでもなく、翌日には当然のように神戸の洋館へ現れた。
「おはよ。今日も調子どう?」
玄関ホールで立ちすくむ使用人たちは、その軽さについていけない。
だが、悟には関係なかった。
仁美の体調は相変わらず不安定だった。
通されるたびに、微熱と倦怠感に顔色を悪くし、時には座っているだけで呼吸が乱れることもある。
悟はそのたびに手を伸ばし、当たり前のようにその手を握った。
「ほら、深呼吸。……大丈夫。俺がいるから。」
本来なら五条家の跡取りがそんな面倒くさい役をする必要はない。
しかし悟は毎日のように足を運んだ。
使用人たちはいつしか悟を見ると軽く頭を下げるようになり仁美の両親も「五条さまには……」と恐縮するようになっていった。
しかし、悟は何も気にしない。
仁美が倒れると、誰よりも早く悟が駆けつけた。
布団に寝かせ、額の熱を確かめ、呪力の乱れを調整し、水を飲ませる。