第16章 Drastic medicine(緑谷出久 ホークス)
確かに、僕は繭莉が好きで、繭莉も僕を好きだと言ってくれて。
でも、付き合おうとかそんな話をした事は一度もなかった。
「いえ……付き合ってるわけではない、です……」
そう言うしか、なかった。
「付き合ってないのに定期的に会ってんのか」
「……」
言葉が、出てこなかった。
僕達の関係は、他人から見たらおかしいのだろうか。
「もしかしてお前らセフ「ちっ、違います!そんな事してないです本当に!」
相澤先生の不穏な言葉を遮って、僕は急に焦った心を落ち着けようと軽く息を吐いた。
「……何も、してないんです」
「じゃあ、会って何してるんだ?」
え?
何って……
「え、あの……喋ったり、とか……」
「随分と清い関係だな」
清い関係。
でもそれは、繭莉がそう望むから。
僕は彼女の望みを叶えてるだけで。
本当は、全部が欲しい。
そんな僕の気持ちを知ったら、どう思われるだろう?
「いいんです、今はこれで」
繭莉にどう思われるか考えると怖いから、僕は自分の本当の気持ちに蓋をするようにそう言った。
それで、いいんだ。
僕は、自分にそう言い聞かせた。
pm5:45。
「こんにちは、ホークスさん」
さっき、繭莉に手が空いたから数学を教えるとメッセージを送ったので素直に彼女は俺の所にやってきた。
「ねぇ、見て!今日授業で出た問題、1人で解けたの!」
そう言いながらソファに座ると、ノートを机の上に広げ始めたので彼女の隣に腰掛けた。
「見せて」
ノートを手に取ろうと身体を動かしたその時、隣からふわりといつもの繭莉ではない匂いがした。
甘い匂いに混ざった、男の匂い。
「……繭莉」
「はい?」
繭莉が、不思議そうに首を傾げた。
「カレシでも、出来た?」
「えっ」
所詮俺達は、身体だけの関係だ。
恋人でもなんでもないから、繭莉に男を作る権利を奪えるワケじゃない。
そう理解はしているけど、酷い焦燥感が俺を襲い始めた。
許さない。
許せない。
他の男が繭莉に触るなんて。
「……どんな、男なの?」
「彼氏っていうか、そんなんじゃない、けど……」
自分から聞いておいて、その先を聞きたくなかった。