第16章 Drastic medicine(緑谷出久 ホークス)
キスしたら、その後繭莉はどんな表情をするんだろう。
もっと、奥深くに触れたら?
どんな声を出して、どんな目で僕を見るんだろう。
……あ、なんか、ヤバい……
これ以上考えたら、学校にいるにも拘らず自分がとんでもない事になると思った僕は、無理矢理考えるのを止めた。
「もう、職員室戻らないと……」
少し熱くなった身体を誤魔化しながら、僕は空き教室を後にした。
「……はぁ……」
職員室の自分の椅子に腰掛けて、軽く溜息を吐く。
「どうしたんだ?緑谷」
丁度後ろを通りがかった相澤先生がそう尋ねてきたので、僕は返答に迷った。
相澤先生は、僕が繭莉を好きな事を知っている。
だけど今の繭莉との関係は、流石に相澤先生にも言えないと思ったからだ。
「いえ……なんでも、ないです……」
「何でもなくて溜息出るか?普通」
「……う……」
確かにそうだ。
何もないのに溜息を吐く人間は多分いない。
僕が何を言おうかと迷って言葉に詰まっていると、肩にポンと手を置かれた。
「どうせ甘井の事だろ」
「うっ!」
言い当てられて、更に言葉に詰まった。
周りを見れば、まだ先生達が各々作業をしている。
こんな所で、はいとも何とも言う気にはなれない。
「いえ、えっと……」
「緑谷お前、分かりやすすぎるぞ」
「……っ……」
「最近、授業終わってから職員室に居ない時間あるだろ。……気にはなってた」
相澤先生には、言わなくてもバレているんじゃないかと思うとぞっとした。
「相澤先生……あの……」
「場所、移すか」
そう言って相澤先生が歩き出したので、僕はもう仕方ないと腹を括って彼の後をついて行った。
そして、やって来たのはあの空き教室。
さっきまで僕と繭莉が会っていた場所だ。
そんな所に連れて来られると、なんだか気まずくて堪らない。
「無理に聞く気もないが……甘井と何か、あったのか?」
僕は、さっき閉め忘れていた窓をそっと閉めた。
言うべきか、言わないべきか。
「放課後、甘井さんと会ってるのは……事実です……」
考えあぐねた末に、僕はそう言っていた。
「お前ら、付き合ってるのか?」
「へっ!?」
つ、付き合ってる!?
そういえば、どうなんだろ……
僕達の関係って、なんだ?