第16章 Drastic medicine(緑谷出久 ホークス)
付き合っている訳でも、まして彼女の気持ちを確認した訳でもない。
確かに身体の繋がりは、ある。
だけど、心はそこにない気がする。
虚しく思うけど、それでいいとすら思う。
病気だ、こんなのは。
「この時期だと期末テスト?それまでやる気が……っと」
言いかけた所でポケットの中のスマホが震えた。
それを取り出して通知画面を眺める俺に目良さんが尋ねた。
「何ですかホークス、そんな真面目な顔してスマホなんか見て……彼女でも出来たんですか?」
「そんなの、出来ませんって」
いっその事、彼女になってくれたらそれはそれで楽なんだけどなぁ。
繭莉から送られてきたメッセージを眺めながら、そんな事を思ってしまった。
『会いたいです、この問題が全然分からないの』
その一言と、問題の数式が映った写真。
所詮あの子にとって俺は、勉強も教えてくれて身体も満たしてくれる都合のいい男ってところなんだろう。
『いいよ、おいで』
都合のいい男と分かっていても、そんな返事をしてしまう。
ちょっと、イカれてると思う。
「まぁ、そういう事にしときましょう。じゃあ、また」
そう言って目良さんは部屋を出て行ってしまった。
「……はぁ……」
1人になって静まり返った部屋に、自分の溜息が響く。
きっと、本当に欲しいものは……それは、分かってる。
「言わないと、なぁ……」
繭莉に、好きだって。
そう思い立ってしまったのが、いけなかった。
PM5:45。
「こんにちはぁ」
俺の気持ちなんて露ほども知らない繭莉がいつのもように部屋に入って来た。
「これ!ホントに分かんない!」
部屋に入るや否や、彼女はテーブルにプリントを広げて長ったらしい数式を指差した。
「……どれ、見せて」
ソファに腰掛けて、テーブルの上に広がったプリントを手に取った。
「ああ……これ、ちょっとした応用だよ。まずさぁ、これを……」
プリントに、数式をどんどん書き込んでいく。
「……で、こうなったら、こう。分かった?」
「んー……」
繭莉は、口元に指を当てて考え込んでいた。
そして、ふと視線を上げたので必然的に目が合ってしまった。
ドクドクと心臓が音を立てた。
言うなら、今しかないと思った。
「繭莉、あのさ」
「……だめ」