第16章 Drastic medicine(緑谷出久 ホークス)
それから、数日後。
俺は、繭莉に連絡先を教えた事を少し後悔した。
恐らく授業中であろう時間に何故か彼女から届くメッセージ。
そこには必ずと言っていい程、授業で出された問題であろう数式だけが載せられていた。
俺はいつも溜息を吐きながら、いけないと思いつつ結局答えを打ち込んでは送信してしまう。
きっと彼女は、それをそのまま回答として提出しているに違いない。
これは、立派なカンニングだと思う。
答えを送ってしまう俺も俺だけど、そんなのが毎日続くのはよろしくないと思う。
「一言言った方がいいか……いい加減」
学校が終わったらここに来るようにというメッセージを送信すると、溜息が出た。
これは、何の溜息なんだろうか。
説教しなきゃいけないという重責を担ってしまったからだろうか、それとも……。
「……はぁ……」
それともの先を考えると、あまりのあり得なさにまた溜息が出た。
もう一度会えばきっと分かる。
この、モヤモヤとした気持ちの正体が。
そして、夕方。
今日最後の仕事を片付けていると、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。
「こんにちはぁ」
カンニングの罪を罪とも思っていなさそうな繭莉が暢気な顔で部屋に入って来た。
「繭莉ちゃん」
「はい?」
「……なんで今日、呼ばれたか分かってる?」
「勉強、教えてくれるんですよね?」
その少しずれた答えに今日何度目かの溜息が出た。
……ホントは分かってんのにズレた事言ってるんだか、なんなんだか……
「授業の問題くらい、自分で考えないと。……ああいうの、カンニングだから」
少しキツめに言ってみたけれど、どうやら彼女にとってはキツくも何ともないらしい。
「教えてくれるって、言ったから」
と、しれっと言ってのけた。
もう少し言わないと、この手のタイプはダメージを受けないらしい。
「そこ、座ってくれる?」
目の前のソファを指差して言うと、素直にそこに座ったのでテーブルを挟んだ向かいのソファに俺も腰かけた。
「……あのさ、」
「教えて?……勉強」
繭莉は、自分が怒られているという状況下にあるというのに微笑んでいた。
その微笑みを見ると、またあの不思議な気持ちにさせられてしまって言葉が上手く出て来なくなる。
……どうしたもんか……