第16章 Drastic medicine(緑谷出久 ホークス)
てっきり俺に何か言って欲しいヒーロー志望なんて、男子かと思っていたので華奢めな女の子の姿に正直ビックリした。
「善見おじさん、話ってなぁに?」
「ヒーローの先輩から、大事な勉強の話をね……頼みますよ、ホークス」
そう言って目良さんは部屋を出て行ってしまった。
え……
ちょっと待ってよ。
不思議そうに首を傾げてこちらを見てくるその子は、高校生にしては少し大人びた印象だ。
「……あの……?」
部屋に初見の女の子と2人きりになってしまって、若干気まずい。
「あー……えっと……なんだっけ……あ、そうそう。勉強、ガンバってね」
正直、俺が何か言って勉強するくらいなら、誰が言ったってすると思う。
「勉強すれば、公安委員会会長になれるって。目良さんがさっき言ってましたよ」
俺は、この場を適当に流して目良さんを探しに行こうと思い椅子から立ち上がろうとした。
「へぇ、本当?」
いつの間にか俺との距離を縮めていたその子は、机に頬杖をついた。
「そしたら、あなたの仕事なくなっちゃうじゃんね?」
そう言って、俺の顔を覗きこんで微笑んだ。
その、子供みたいな態度なのにどこか大人びた目。
学校じゃあこの子の事を好きな男の1人や2人いそうだなと思ってしまった。
「……そう言うなら、勉強ガンバろっか」
「どうせそう言えって、言われたんでしょ?」
なんかこの子、不思議な感じがするな。
どうしてそう思うのかは……分かんないけど。
「なんで数学分かんないの?簡単じゃない、答え1個しかないんだから」
「どこが分かんないのか、分かんないんです」
どこが分からないのか分からない。
数学を嫌いな人間は大抵こう言う。
「ついでに言うと、今日の宿題の問題も全然分かんないの」
彼女は、鞄からごそごそとプリントを出すとそれを俺の目の前に出した。
「簡単だって言うなら……教えて?」
どうして結局、こうなるんだか……
家庭教師じゃないし、俺。
溜息を吐いてプリントを眺めると、2次関数の簡単な問題だったのでなんでこれが分からないのかと疑問に思ってしまう。
「これはさ……ちょっと、貸して」
俺は、仕事の途中だというのにプリントに答えの数式を書き出していた。
「……で、こうなるワケ」
「へー……よく分かんないけど、すごーい……」
「分かろうとする気、ある?」
