第16章 Drastic medicine(緑谷出久 ホークス)
出久と繭莉にそんな事があった数か月前
公安委員会本部。
「ホークス、勉強ってした事あります?」
突然目良さんに聞かれて、俺は目を瞬かせた。
「なんです、急に」
不思議に思ってそう聞くと、目良さんは溜息を吐いた。
「いやぁ……親戚の子の話なんですけどね、勉強が出来ないらしいんですよ」
「はぁ」
勉強ね……
そんなの、授業聞いてたら自然と出来ない?
いや、俺も人並みに出来るだけで成績よかったワケじゃないけど。
「まぁ、勉強がというよりは、数学が壊滅的に出来ないらしいんです。でも本人は全く気にしてないようで……」
「本人がそれでよけりゃいいんじゃないっスか?」
「そりゃ、そうなんでしょうけどねぇ……親からしたら、大問題みたいですよ?」
目良さんは、何故俺にこんな話題を振ったのだろうか。
俺は親になる事も、これから一生懸命勉強する事も無いというのに。
明らかに人選ミスだろう。
「家庭教師でも付けたらいいんじゃないですか?」
「まぁ、そうなりますよねぇ……ただ……」
腕を組んでうーんと唸った目良さんが、俺の方をちらりと見たので、まさかとは思うがそんな事はないだろうと考えた事を口に出すのを止めた。
「その子、ヒーロー志望なんですよ」
まさかと思っていた事が現実になってしまいそうな予感がして、なんだか背中に変な汗がじんわりと滲んだ。
「ヒーローの先輩として、ちょっと一言言ってやってくださいよ」
「……え……」
予想していたのと少し違う言葉に、変な汗はスッと引いていった。
何それ……ま、いっか。
よかった、勉強教えてやってくれとか言われなくて。
「頼みますよホークス」
「俺の言う事なんか、聞きますかね?」
「ちゃんと勉強頑張れば、公安委員会会長になれる!とか言ってくれればいいんですよ」
「それ、俺の仕事無くなるんですけど」
そんな事を話しているとドアをノックする音が聞こえて、今日来客の予定なんてあっただろうかと記憶の糸を辿っていると、目良さんがドアをギッと開けた。
「きっと繭莉ですね、呼んでおいたんですよ」
目良さん、根回し早すぎるって……
俺が断ってたら、どうするつもりだったんだろ?
「はぁ、ここに入るの大変だったんですけど……」
そう言いつつ部屋に入って来たのは、雄英の制服を着た女の子。
