第16章 Drastic medicine(緑谷出久 ホークス)
「お、緑谷。……何疲れた顔してんだ?」
職員室に戻ると、相澤先生が僕の顔を覗きこんできた。
よく周りを見るとちょうどいい事に、職員室には僕と相澤先生しかいなかった。
そして、こんな事を相談できそうな人も、彼しか思い浮かばなかった。
「あの、相澤先生……」
僕は、さっきの甘井さんとの出来事の一部始終を相澤先生に話していた。
「甘井か……」
僕から全てを聞いた相澤先生は、顎に手を当てて何かを考える仕草を見せた。
「僕の言動は、間違っていたんでしょうか……」
話してスッキリしたのと同時に、僕は不安になった。
相澤先生からどんな答えが返ってくるのか、考えただけで怖くなる。
「いや、間違いでもないだろ」
「え」
そんな優しい答えが返ってくるとは思っていなくて僕は拍子抜けした。
「人の気持ちばかりは、どうにもならんからな。お前本気で甘井が好きでその時頷いたのか?」
核心を突く質問をされて、本当の事を言おうかどうか迷った。
けれど、ここまで聞かせておいてその場のノリで頷きましたと嘘を吐くのもなんだかおかしいと思ったので、「はい」と素直に答えた。
「……なら、いいんだが。けど緑谷、これだけは覚えとけ」
相澤先生は、僕の方をちらりと見た後窓の外に視線を移した。
「あの年頃の子供だ。次の日には全然違う事考えてやがる時がある。……一挙一動に一喜一憂するなよ」
「……はい……」
「ところで緑谷」
相澤先生が、にやりと笑ったのでなんとなく嫌な予感がした。
「なんで、甘井なんだ?」
「うっ!」
そ、それは……
かわっ、可愛いし、なんか……
大人びてるのに、とても脆そうで。
すごく、護りたくなってしまうんだ。
さっきだって……
「顔か?」
考え込んでいた所にツッコまれて一瞬で僕の思考回路はこんがらがってしまった。
「ちっちが、違います!」
「なんだ、大事だぞ顔は」
「そうですけど!」
この後、しばらく僕は相澤先生に揶揄われる羽目になった。
この日から、僕のまぁまぁ平穏だった生活は甘井繭莉の所為で一変してしまうのだった。