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君の隣で眠らせて【チェンソーマン連作短編】

第4章 夜明けがくる前に…【早川アキ夢・後編】



「まさか…これは罠か…?」

全身が粟立つような怖気を感じたアキが振り返ると、先程斬り捨てた人物が目に入った。

パーカーのフードから覗いていたのは、声を出せないように口元を塞がれたルルの顔だった。
彼女の両手は刃物を握るような形で縛られ、固定されている。

混乱した頭で状況を整理しようとするが上手くいかない。
アキは膝をつき、ルルの身体を抱き起こした。

「ルル…?」

両手の拘束を解き、口元を塞いでいるテープを剥がす。

『っ……ア、キ…先輩…』

冷たいコンクリートの上に真っ赤な血溜まりが広がっていく。

「そんな…俺が、お前を…?」

自分の手でルルを斬ってしまったアキは涙を浮かべながら必死で止血した。

『…せん…ぱ………マ、キ…マさ……気を…つけ……ゴホッゴホッ』

咳き込んだ口元が血の色に染まる。

「ルル!」
『…ハァ…ハァ……も、一度……会えて…良か、た…』

意識が遠のいていくルルに、アキは叫んだ。

「ルル、ダメだ!目を閉じるな!」

喉が引き裂かれるように痛み、声がうわずる。
あふれ出た涙がポタポタと彼女の胸元を濡らした。

「頼む!目を開けてくれ!」

ルルはかすかに目を開けると、震える手を伸ばしてアキの頬に触れた。

『……アキ、先輩………愛……して…る…』
「…イヤだ……逝かないでくれ………ルル!」

絶望的な想いでルルの身体を抱きしめる。

「…俺もお前を愛してる。だからお願いだ…逝くな…」

必死の呼びかけもむなしくルルの身体から力が抜け、腕がダラリと下がった。


悲しんでいる間もなくルルに変身していた悪魔が襲いかかってくる。
ルルを抱きしめたまま座り込んでしまったアキを庇って天使の悪魔が応戦していたが、それも限界を迎えていた。

その時、ガラガラと音がして地下室の天井が崩れはじめた。
天使の悪魔はアキのソードベルトを掴んで大きな羽根を広げた。

「おい、何する…放せ…」

抵抗するアキを無視して飛び上がる。

「離してくれ!…ルル……ルル!!」

血溜まりの中に倒れているルルの上に、無数の瓦礫が降っていく。
アキは声が枯れるほど彼女の名前を叫び続けた。


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