第4章 夜明けがくる前に…【早川アキ夢・後編】
ドアが閉まる小さな音で、アキは目を覚ました。
人の気配がないことに気づき、慌てて飛び起きる。
「ルル、どこだ?」
部屋の中を探したが誰もいない。
例えようのない恐怖が背中を這い上がってくるのを感じながら、アキは外へ飛び出した。
まだ近くにいるはずだと周辺を探し回ったけれど、どれだけ探しても彼女の姿はもうどこにもなかった…
ルルは再び姿を消した。
一緒に逃げようと言ったアキに、泣きながら嬉しいと答えてくれたルル。
そんな彼女が何も告げず、直後に居なくなってしまうなんてどうしても信じられなかった。
「待ってろ。俺が必ず見つけてやる…」
アキは公安の任務とは別に、ルルが潜入していた組織とそのアジトについて独自に捜査を始めた。
一刻も早く探し出そうと必死になっていた時、公安に銃の悪魔と関わりのある組織に関するタレコミがあった。
郊外の廃墟に潜伏しているとの情報を受けて、アキとそのバディである天使の悪魔が派遣された。
朽ちかけた、ひとけの無いビル。
今にも崩れてきそうな廃墟の中を進んでいくと、地下に繋がる階段を見つけた。
警戒しながら降りていくアキの耳に、突然女性の叫び声が聞こえてくる。
その瞬間、アキが契約している未来の悪魔が少し先の未来のビジョンを見せてきた。
柱に縛り付けられたルルと、黒いパーカーのフードを深くかぶった人物。
その人物は両手で握った刃物を頭の上まで振り上げると、力いっぱいルルの心臓に突き立てた。
「っ…!」
アキは急いで階段を降り、正面にある鉄の扉を開いた。
視界に飛び込んできたのは、先程未来の悪魔に見せられたのと全く同じように柱に縛り付けられているルルの姿だった。
彼女の前には黒いパーカーのフードを被った1人の人物が立っていて、いまにも振り上げた刃物を胸元に突き立てようとしている。
「やめろ!!」
アキは血相を変えて飛び出すと、瞬時に刀を抜いて背中からその人物を斬った。
床にうつ伏せに倒れた相手には一瞥もくれず、縛られているルルに駆け寄る。
「おい!大丈夫か!?」
拘束をといた次の瞬間、ルルだと思っていたその身体はみるみる形を変え、悪魔に変化した。
驚愕の表情で後退りしながら、気味の悪い姿を呆然と見上げる。