第4章 夜明けがくる前に…【早川アキ夢・後編】
「…民間のデビルハンターであるルルちゃんの遺体がその後どうなったのかは、私にも分かりません」
マキマの返事を聞いて、アキは奥歯を強く噛み締めた。
「……そうですか」
深呼吸して冷静さを取り戻したアキは、ドアを開けて廊下に出た。
ひとけの無い薄暗い廊下を歩きながら、アキは考えた。
公安は…マキマはどこまで分かっていたのだろう、と。
"…ルル…俺が必ず仇をとってやる。…仇をとって、お前のところへ行くよ…"
闇に飲まれそうになりながら歩みを進める。
窓の外では月が冷たく光っていた。
"…だから…待っててくれ…"
それからのアキは、これまで以上に対魔特異4課の任務を熱心にこなした。
悪魔を斬って斬って斬りまくる日々。
そして、たまにひとりきりになりたくなった夜には、あのバーを訪れる。
カウンターのスツールに座り、ウイスキーのグラスを傾けながら、アキは愛しい人との想い出に浸った。
マンションで共に暮らしたあの頃から、アキが本当の気持ちに気が付くまでの数年間、彼女はずっと自分を慕い続けていてくれたのだと、思い返すほどに強く感じた。
ようやく心を通わせることができた夜の、あのかけがけのない瞬間のルルの笑顔がいつまでも胸の奥に突き刺さって、息が苦しくなる。
いつまでも慣れることのない甘く切ない痛みを噛み締めながら、その夜もアキは酒をあおった。
"…ルル……もう一度、お前に会いたい…"
何杯目かのウイスキーを飲み干し、酔い潰れてしまったアキの耳に
カランカランという心地よいドアベルの音が聞こえたような気がした…
夜明けがくる前に…【早川アキ夢・後編】
終わり