【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第5章 A Heart Divided
黒尾はそれでも何も否定しなかった。
その沈黙が、いっそう仁美の心をかき乱す。
黒尾は視線を落とし、低い声で言った。
「……昨日、研磨と……キスしたんだって?」
仁美の心臓が跳ねた。
一瞬、呼吸が止まる。
「な、なんで……。」
頬が一気に熱くなる。
言い返す言葉も出ないまま、仁美は視線を逸らした。
その反応を見た黒尾の目の奥に、何かが弾ける。
ほんの一瞬––––理性が揺らいだ。
黒尾は壁に押し付けていた腕を少しだけずらし、仁美の顔を覗き込むように近づけた。
次の瞬間––––。
黒尾の唇が仁美を強く奪った。
抑え込んでいた感情を、すべて叩きつけるような深いキスだった。
唇を押し付ける音が倉庫に響き、仁美の背中が冷たい壁に押しつけられる。
息をする暇もないほどの、激しい熱。
黒尾の手が仁美の頬に添えられ、逃がさないように指先に力がこもる。
(……クロ……っ!!)