【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第5章 A Heart Divided
呼吸が奪われ、思考が混ざっていく。
胸の奥で抑えていた想いも、昨日の出来事も、黒尾のキスにすべて掻き乱されていった。
静かな倉庫の中に、舌が絡まる音が響いた。
吐いた息さえを飲み込まれて、逃げ惑う舌は簡単に黒尾の舌に捕まる。
黒尾は仁美の体を強く抱き寄せ、そのまま床に押し倒すようにして組み敷いた。
冷たいマットの感触が背中を突き上げ、仁美は息を詰めた。
逃げようと腕を動かしても、黒尾の手が容赦なく押さえつける。
動けなくなる仁美の唇をさらに奪った。
「……クロ、やめて……!」
仁美の声は震えていた。
黒尾の瞳はぎらりと揺れていて、もういつもの柔らかさはどこにもなかった。
「研磨とキスだけだったのか?」
黒尾の声は低く、押し殺したようだった。
ぞくりとした緊張が空気を裂く。
「……他には……触られたり、してないよな?」
黒尾はそう確認しながら、ワイシャツから見えた仁美の首筋に唇を押し付けた。