【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第5章 A Heart Divided
「……こんなこと、されても……迷惑だよ。」
黒尾の身体がぴくりと動いた。
仁美は、今にも泣きそうな息を押し殺しながら続ける。
「クロの……唯一の“好きな人”にもなれないのに……こんなんじゃ……友達にもなれない。」
その言葉に、黒尾の目が細く揺れた。
やがて黒尾が低く、押し殺すように呟いた。
「……友達だと思ったことなんて、一度もねぇよ。」
仁美の胸がぎゅっと縮む。
顔を上げられないままでも、黒尾の言葉は真っ直ぐに突き刺さった。
「ずっと……好きだった。」
短い言葉。
けれど、その声には長い時間が詰まっていた。
黒尾の手が、仁美の顔のすぐ横の壁をぎゅっと握りしめる。
骨が軋む音がするほどの力だった。
仁美の呼吸が乱れた。
昨日黒尾は他の女に告白した。
そのことを思い出した瞬間、心がぐらりと揺れる。
「……だって……昨日、他の人に……。」
声が震える。
戸惑いと痛みと混乱がごちゃ混ぜになって、視界がぼやけた。