【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第5章 A Heart Divided
そんな考えが頭をよぎる。
仕方なく制服に袖を通し、仁美は学校へと向かった。
昇降口を抜けて教室に入ると、クラスメイトがすぐに駆け寄ってきた。
「ねえねえ、見た? クロの写真!」
仁美は一瞬、心臓が跳ねた。
“その話”かと身構える。
しかし次に続いたのは全く違う話だった。
「執事服、めっちゃ似合ってたよね!」
「クラスの子が撮ってたんだよ。ほら、これ!」
スマホの画面に映し出されたのは、文化祭のときに執事服を着て、
人混みの中で微笑んでいる黒尾だった。
その写真を見た瞬間、仁美の胸が痛くなった。
自分の知らない黒尾がそこにいるようで、少しだけ、息が苦しくなった。
「送ろっか?」
クラスメイトの言葉に、仁美はかぶりを振った。
「……いらない。」
笑顔を作ろうとしても、うまく口角が上がらなかった。
黒尾のことを考えるたびに、胸の奥で、ちいさな棘が刺さるみたいに痛んだ。
黒尾が学校に入ってきたことは、すぐにわかった。