【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第5章 A Heart Divided
教室のざわめきの中で、彼の声と足音はいつもよりも先に空気に届く。
いつもの仁美なら、無意識に目で彼を探していた。
でも今日は見なかった。
今は、黒尾と話をしたくない。
視線を向けるだけでも、胸の奥がざらつくような痛みを覚える。
ほんの少し時間がたてば、きっといつも通りに接することができる。
だから今は、自分の感情を落ち着かせたかった。
だけど、黒尾は違った。
文化祭の後片付けが始まり、仁美はできる限り黒尾と距離を取った。
同じ空間にいるのに、目を合わせない。
少し離れた位置で、別の班の作業に集中する。
黒尾も特に話しかけてはこなかった。
ただ––––。
彼の視線は、ときどきこちらを追っていた。
作業が終わり、みんながそれぞれ解散していく時間。
仁美は少し時間をずらして1人で教室を出た。
友達と一緒に帰る気にはなれなかったから。
その時だった。
背後から、手を掴まれた。
「……クロ?」