【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第5章 A Heart Divided
振り返ると、そこに立っていたのは黒尾だった。
「ちょっと、いい?」
振り返った仁美の視線の先には、真剣な表情の黒尾が立っていた。
その視線が痛いほどに強くて、仁美は視線を受け止めきれなかった。
「ごめん。」
声が落ちると、黒尾の目がわずかに揺れた。
仁美は視線を落とし、息を整えながらゆっくりと言葉を紡いだ。
「……今、クロと話すのは……ちょっと無理。私、今のままじゃ、うまく笑えない。でも……友達ではいたいの。だから……時間が欲しい。」
穏やかに、できるだけ傷つけないように伝えたつもりだった。
けれど、口にした瞬間、自分の胸にも鋭い痛みが走った。
黒尾と過ごした時間の重さが、逆に言葉を突き刺してくる。
黒尾の手が、仁美の手を掴んだまま、ぐっと力を込めた。
その瞬間、仁美は思わず顔を顰める。
逃げようとしても、その力はびくともしない。
「クロ……っ。」
呼びかけた声は、思わず震えていた。
黒尾は何も言わず、そのまま仁美を掴んだまま歩き出した。