【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第5章 A Heart Divided
「話してるうちに、わかった。……あれ、旦那の暴力だった。だから……ほっとけなくて。連絡先、交換した。……それから、たまに話してる。」
研磨はゆっくり息を吐く。
クーラーの風が肌を撫でて、夜の静寂が2人の間に降りた。
黒尾は嘘をつかなかった。
研磨だから、だ。
研磨は目を閉じ、少しだけ深く息を吐いた。
そして、静かな声で言った。
「クロがさ、仁美以外を好きになるのは……別に、構わないよ。」
黒尾は少し驚いた顔をする。
てっきり何か責められると思っていたのだろう。
研磨は視線を黒尾から外さず、淡々と続けた。
「でもさ–––––結婚してる人ってなると、話は別だ。もし何か不祥事になったら、大会に出られなくなる可能性だってある。学校巻き込まれたら、顧問も部員も終わり。……クロも、俺も。」
黒尾の眉がわずかに動く。
そして、ほとんど反射的に口を開いた。
「そんなこと、あるわけないだろ。」
その声には、ふたつの気持ちが入り混じっていた。