【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第5章 A Heart Divided
夜、研磨の部屋。
クーラーの音が、一定のリズムで静かに鳴っている。
ベッドの上にだらしなく転がる黒尾と、その足元に座ってゲームをいじる研磨。
いつも通りの2人だった。
だけど、今日は違う。
研磨はコントローラーを置くと、何度も頭の中で言葉を選びながら、黒尾の名前を呼んだ。
「……クロ。」
その声に黒尾が「ん?」と振り向いた瞬間––––。
スマホの通知音が鳴った。
黒尾は無意識のようにポケットからスマホを取り出す。
ロックを外してメッセージを見たその顔に、ほんの一瞬、普段と違う色が浮かんだ。
研磨の目はその変化を逃さなかった。
「……あの人と、連絡取ってる?」
黒尾の指先が止まる。
短い沈黙。
そのあとの黒尾は、いつもの軽口を返すでも、誤魔化すでもなかった。
「……あぁ。」
その声は驚くほど素直だった。
天井を見上げながら、黒尾はぽつりぽつりと話し始める。
「……あの時、初めて会ったとき、腕とか鎖骨に痣があったって言ったろ?気になって、何回か行った。……あのキッチンカー。」