【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第5章 A Heart Divided
黒尾の表情が一瞬、曇った。
ほんの一瞬。
本人も気づいていないような、ささくれのような感情が顔をかすめた。
研磨はそれをしっかり見ていた。
ただ、それ以上何も言わず、いつものように何事もなかった顔をしていた。
心で感じた違和感はこの日で消えるはずだった。
だけどその違和感は確信に変わっていった。
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映画館の前で、研磨と仁美は並んで立っていた。
空は薄く暮れ始め、街灯がポツリと灯る。
3人で映画に行こうと約束していた日。
残るは最後の1人――黒尾だけだった。
「ちょっと遅いね。」
仁美が腕時計を見ながら呟く。
約束の時間を、すでに5分ほど過ぎていた。
「……まぁ、クロだからね。」
研磨は肩をすくめて答える。
黒尾の時間感覚はいつもルーズだった。
それが当たり前すぎて、2人とも特に怒ることもない。
それでもそのとき。
「おーい。」
軽い調子の声とともに、黒尾が角を曲がって現れた。