• テキストサイズ

【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】

第5章 A Heart Divided


––––そうでなければ、この目の前の仁美の笑顔が、壊れてしまう。




彼にとって、それは許しがたいものだから。




仁美がジュースを少し飲み終える頃。

黒尾はふと、彼女の顔にかかった髪に目を止めた。

汗と湿気で張りついた黒髪の一房が、仁美の頬にかかっている。




黒尾は何のためらいもなく、その髪に指を伸ばした。

柔らかい髪をすくい、耳にかける。




それは黒尾が仁美以外の誰にもしない仕草だった。




「……クロ。」




仁美が驚いたように小さく彼の名前を呼ぶ。

指先が触れた髪の感触が、黒尾の指に微かに残る。

そのまま、2人は言葉を失い––––。

ただ見つめ合った。




黒尾の目はやさしく、仁美の目はまっすぐだった。




まるでそこだけ時間が止まったように––––––。




研磨はその空気の中、無言で仁美の手元にあるジュースを取った。

「ちょっと。」

そう言って、残りを一口飲む。




研磨が触れたのは、さっき仁美の唇が触れたストロー。

/ 308ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp