【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第5章 A Heart Divided
「……あの人、長袖だったろ。」
研磨は一瞬だけ眉をひそめた。
「……うん。」
「腕と……鎖骨のあたりに、痣があった。」
研磨は黙って聞いていた。
蝉の鳴き声が、やけに耳にうるさい。
「……気になった。」
黒尾がぽつりと漏らしたその一言に、研磨はわずかに目を細める。
普段なら、他人のことにここまで踏み込むような男じゃない。
それなのにその声には、確かな“引っかかり”があった。
「ふぅん……。」
研磨はいつもと変わらない調子で返した。
でも心の奥では、軽くざらつくような感覚を覚えていた。
駅へと続く歩道を歩いていると、前方から手を振りながら近づいてくる姿があった。
「––––あ、クロ、研磨!」
仁美だった。
部活帰りの二人を見つけると、汗をかいた顔で嬉しそうに駆け寄ってきた。
制服の裾が風でふわりと揺れる。
「部活終わったの?」
「うん。」