【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第4章 The Line Between Us
でも今は違う。
視線が自然と吸い寄せられて、胸の奥が熱くなっていく。
(……触れたい。)
あの日と同じ場所で、ぼやけていた感情が、くっきりと輪郭を持って胸を締めつける。
仁美が小さく「大丈夫だよ」と猫に囁いた声が、心の奥に響いた。
研磨はその横顔を見ながら、そっと手を伸ばした。
触れたい。この肩を、この背中を––––––。
その瞬間、伸ばした手首を、冷たい力が止めた。
「……。」
振り向くと、そこには黒尾が立っていた。
部活帰りのジャージ姿のまま、細い縦の瞳孔が、研磨を真っ直ぐに捉えていた。
その目には、はっきりとした意味があった。
研磨も視線を返す。
互いに一言も発しないまま、ただ、無言のまま…。
睨み合うように見つめ合う。
「……クロ?」
仁美が振り返った。
そこに立っていた黒尾に気づく。
瞬間、黒尾はいつものように軽く口角を上げた。
研磨も、それに合わせるように、穏やかな笑みを浮かべる。
仁美はその笑顔を見て、何の違和感も感じなかった。