【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第4章 The Line Between Us
2人が自分を見て笑うのは、ずっと昔から変わらない光景だから。
だけど–––––。
その背後では、ほんの数秒前に視線がぶつかり合っていたことを、彼女は知らない。
2人の間には、言葉にならない空気が確かにあった。
“好き”という気持ちが、互いに向かう先をはっきりと示している。
けれどそれはまだ、曖昧で、形のないものだった。
仁美は再び猫の方へと視線を戻す。
その背中を、2人は並んで見つめていた。
同じものを見ながら–––––。
同じ想いを胸に抱えながら。
–––
–––––
––––––
数日後の放課後。
練習帰りの体育館裏、夕暮れの光が地面に長い影を落としていた。
人気のないベンチに、黒尾と研磨は並んで座っていた。
「……なぁ、研磨。」
珍しく黒尾の声が少しだけ低かった。
横顔を見ても、いつもの飄々とした笑いはなかった。
「俺……仁美のこと、好きなんだよ。」
研磨は、驚かなかった。
とっくに気づいていた。
自分が同じ気持ちを抱えていることも、黒尾がそうであることも。