【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第4章 The Line Between Us
「……知ってた。」
「だよな。」
黒尾は短く笑って、靴先で地面を蹴った。
「……でもさ、研磨も好きだろ。」
今度は研磨が黙って頷いた。
夕焼けのオレンジが2人の影を並べる。
誰もいない場所でだけ、2人は本音をさらけ出せる。
「壊したくないんだよな、この感じ。」
黒尾がぽつりと漏らす。
「……俺も。」
研磨も静かにそう返した。
彼らの関係は、ただの幼なじみではなかった。
部活も、家も、日常のすべてを共有してきた時間の重さがある。
「じゃあさ––––––…。抜け駆け、なしにしよう。」
黒尾が立ち上がり、背を向けたまま言う。
「俺たちは……仁美の気持ちに任せよう。どっちを選ぶかは、彼女が決める。」
沈黙の中、研磨は小さくうなずいた。
それは、子どもの頃から続いてきた“3人”の形を守るための––––。
静かで–––––けれど残酷な約束だった。
–––
–––––
––––––
薄暗い体育倉庫。
イヤフォンから流れる邦楽の音だけが、この空間を柔らかく満たしていた。