【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第4章 The Line Between Us
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中学生になった春から夏への境目。
部活帰りの夕方は、どこか少し肌寒くて、空はオレンジ色と群青が混ざり合う時間だった。
校門を抜けたあと、仁美と研磨は二人並んで歩いていた。
まだジャージの袖口からは、うっすらと部活の汗の匂いが残っている。
道を抜け、川沿いに出ると、視界の先に懐かしい橋が見えた。
–––あの日、3人で黒い子猫を見つけた場所。
「……なんか、懐かしい。」
仁美がぽつりと呟いた。
橋の下はあの頃と変わらず、水の音が静かに流れている。
ふと視線を落とした先に、小さな黒猫が、段ボールの陰からこちらを見上げていた。
「また……黒猫。」
仁美がしゃがみ込み、黒猫を覗き込む。
その背中越しに夕焼けの光が差し込み、髪が柔らかく揺れた。
あの頃と同じ姿勢、同じ声、同じ仕草。
けれど今は–––––。
もう、小さな子どもじゃない。
研磨はその背中を見つめていた。
小学生のとき、同じように見つめていた背中。