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【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】

第3章 When It Hurts to Love


視界の端が滲み始めて、仁美は無意識に唇を噛んでいた。




そのとき–––––。




研磨の指がそっと離れ、代わりに耳元に柔らかい感触が触れる。

彼が持っていたワイヤレスイヤフォンを、仁美の耳に押し込んだのだ。




「……聞かなくていい。」

研磨が静かに言った。

その声は、ささくれ立つ心に触れる水のように、やわらかく、でも強かった。




仁美の目から、滲んだ涙が一粒、頬を伝って落ちた。

イヤフォンから流れる音楽が、外の声をすべて遮る。




研磨はじっと、仁美の瞳を見つめていた。




外の声がかき消され、イヤフォンから流れる流行りの邦楽が、薄く、世界を包んでいる。





仁美はその視線を受け止めることしかできなかった。

涙が視界を滲ませて、研磨の顔が少しぼやけて見える。




だけど目だけははっきり見えた。

無表情にも見えるその瞳の奥が、今だけは静かに揺れているのが分かった。




「……っ。」

堪えきれず、ひと粒の大きな涙が頬を伝い、研磨の指先に落ちた。
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