• テキストサイズ

【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】

第3章 When It Hurts to Love


「…………。」

胸の奥が、落ち着かない。

後夜祭に黒尾を誘うなら、今しかない––––

そう思えば思うほど、言葉が喉の奥で絡まって出てこない。




仁美はチラリと黒尾を見上げた。

街灯の光が彼の横顔を淡く照らしている。

肩の位置と顔の高さの差は、子どもの頃とは比べものにならないほど開いていた。




あの頃は、並んで歩けば自然と視線が合った。

今は、ちゃんと見ようとしなければ見えない。

控えめに見上げた視界の端っこに、黒尾の横顔が小さく入るだけ。




でも––––

それでも、その顔が好きだった。




無邪気に笑うときも、バレーに夢中になるときも、今みたいに黙って歩いているときも。

その全部を、ずっと見てきた。




仁美は唇をきゅっと結んで、握った拳に力を込めた。

心臓が少しずつ早くなっていく。

次の一歩で、きっと何かが変わる。

そのことを、誰よりも自分がわかっていた。




自分の家の門の前で、仁美は立ち止まった。

「……ここまで、ありがと。……あのさ、クロ…。」


/ 299ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp