【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第3章 When It Hurts to Love
たいていは研磨も一緒で、3人で他愛のない話をしながら帰るのが“いつものパターン”だった。
でも今日は──久しぶりに、二人きり。
昇降口を抜けて校門を出ると、夜の空気がふっと頬を撫でた。
空はまだ完全な夜になりきれず、街灯の明かりが淡く歩道を照らしている。
肌寒い空気を纏って、黒尾の歩幅に合わせて仁美も歩く。
「二人だけで帰るの久しぶりだな。」
黒尾が不意に言った。
その声が夜道に少し響いて、心臓が一瞬跳ねる。
「……うん。研磨がいないと、ちょっと変な感じするね。」
「そうか?」
「だって、いっつも3人だったじゃん。」
黒尾は小さく笑った。
歩きながら両手をポケットに突っ込み、いつもより少しゆっくり歩いている。
そのペースが心地よくて、仁美も自然と足を揃えた。
夜道は、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っていた。
街灯がまばらに灯る住宅街の道を、仁美と黒尾は並んで歩いていた。
二人の靴音だけが、アスファルトに柔らかく響く。