【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第11章 The Night I Chose You
「……大丈夫だから、クロ。」
その声は震えていなかった。
黒尾の指先よりもずっと強く、はっきりと、仁美自身に刻まれていた。
まどか は一歩だけ近づき、かすかに笑った。
「可愛い子だね。」
黒尾の手がびくりと震えた。
視線は逃げるように落ち、掠れた声で「……うん」と小さく返す。
──その瞬間、仁美 の胸の奥で静かに何かが切れた。
仁美 は黒尾の手を握り返し、まどか から一度も目をそらさずに言った。
「……結婚生活、幸せなんですか?」
まどか の笑みが、ほんのわずかだけ固まった。
仁美 の声は続く。
押し込めていた感情が、もう止まらない。
「毎日そばにいて、同じ布団で寝て、辛いことも楽しいことも2人で背負って……そういう積み重ねの中に“幸せ”ってあるものなんじゃないんですか?」
溜め込んでいた言葉が、ひと息に溢れた。
まどか は仁美からゆっくり目をそらして薄く笑った。